祭りの様子
旧暦の盆最終日の夕刻、悪石島の集落では「ボゼ太鼓」と呼ばれる合図の太鼓が打ち鳴らされ、 集落の若者が扮する3体のボゼが、山からゆっくりと姿を現します。ソテツの葉や木の皮で 作られた異形の仮面をかぶり、全身を植物の繊維や泥で覆い、赤・白・黒で塗り分けられた 顔には突き出た目と口が描かれています。手には「ボゼマラ」と呼ばれる赤い泥のついた棒を 持ち、これを人に押しつけて泥を塗りつけることで、災厄を祓うとされています。
迎え火とともに帰ってきた祖先の霊を、あの世へ再び送り出すためにボゼが現れる、という 解釈が一般的です。子どもたちは逃げ惑いながらもボゼに追いかけられ、泥をつけられることで 無病息災を願う――離島特有の閉じたコミュニティの中で、世代を超えて受け継がれてきた 奇祭です。
玄人受けする話題
ボゼの異形の仮面については、日本の他の来訪神とは一線を画す独特の造形から、民俗学や 文化人類学の分野でしばしば話題にのぼります。中でもよく語られるのが、パプアニューギニアの 一部地域に伝わる精霊の仮面と、造形上の共通点が見られるという指摘です。植物の繊維を まとった全身の造形や、原色でシンプルに塗り分けられた面といった要素が、南方の仮面文化との 連続性を思わせる、という見立てです。
悪石島は近年、群発地震などの影響で観光ツアーの実施が見合わされる時期もありましたが、 状況が落ち着くたびに、地元住民の協力のもとでボゼを見学できる観光ツアーが再開されています。 アクセスの困難さそのものが、この祭りを「知る人ぞ知る」秘祭たらしめている面もあります。
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ソテツの葉と原色で作られた、異形の来訪神の姿。