桜島と生きる

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00 — 共生

灰は、
厄介者ではない。

鹿児島市街地からわずか4kmの距離にそびえる桜島は、年間数百回もの爆発的噴火を記録する、 世界でも有数の活動的な火山です。市民は毎朝、洗濯物を干す前に噴煙の向きを確認し、 フロントガラスに積もった灰をワイパーで払います。けれどもこの土地は、その火山灰を厄介者と して排除するのではなく、逆手に取って世界一の農作物を育ててきました。「共生」というより 「開き直り」に近い、鹿児島と火山の距離感を紹介します。

今日も噴煙を上げる、御岳と昭和火口

日常の風景

「克灰住宅」という、鹿児島だけの建築様式。

鹿児島市やその周辺には、「克灰(こくはい)住宅」と呼ばれる住宅が数多く見られます。軒を深く 出し、窓には灰よけの網戸を二重に張り、ベランダには灰を洗い流すための水道栓を備え付ける―― これらは全国共通の建築基準ではなく、桜島の降灰と何十年も付き合ってきた鹿児島県が、独自に 補助制度まで設けて普及させてきた、この土地固有の生活の知恵です。市内には灰を集めて捨てる ための「克灰袋」という専用のごみ袋があり、指定された「克灰袋回収場所」に出せば、行政が 回収してくれる仕組みまで整っています。

降灰予報という日常: 鹿児島地方気象台は桜島の降灰予報を発表しており、 地元テレビの天気予報では、気温や降水確率と並んで「桜島上空の風向き」や「降灰の予想」が 当たり前のように伝えられます。台風情報のような扱いで火山灰情報が流れる地域は、世界的に見ても 多くはありません。

ギネス認定・その1

世界一重い大根、桜島大根。

桜島の火山灰が積もってできた水はけのよい土壌で育つ桜島大根は、直径が40〜50cmに達することも 珍しくない巨大な品種です。一般的な青首大根の10倍以上ともいわれる重量に育ち、1994年には 鹿児島市で開催された「世界一桜島大根コンテスト」で、重さ31.1kgの大根がギネス世界記録に 認定されました。この記録を目指す「世界一桜島大根コンテスト」は今も毎年開催されており、 地元農家が丹精込めて育てた規格外の大根を競い合っています。

なぜ大きくなるのか: 桜島特有の水はけのよい火山灰土壌(ボラ土)と、 根がまっすぐ深く伸びられる栽培環境が、この巨大化の鍵とされています。一方で大きく育つほど 内部にすが入りやすく、糖度や食味との両立が栽培農家の腕の見せどころにもなっています。

ギネス認定・その2

そして、世界一小さいみかん、桜島小みかん。

同じ桜島の畑では、直径わずか3〜4cmほどしかない極小の柑橘、桜島小みかんも栽培されています。 一般的な温州みかんよりひとまわり以上小さいこの品種は、2012年に「世界一小さいみかん」として ギネス世界記録に認定されました。一つの島から「世界一大きい野菜」と「世界一小さい果物」の 両方がギネス認定されているというのは、なかなか他に類を見ない現象です。小ぶりながら皮が薄く 甘みが強いのが特徴で、地元では正月飾りに添えられる縁起物としても親しまれています。

写真で見る

桜島、灰と恵みの風景

言葉だけでは伝わらない部分を、実際の写真で。

錦江湾越しに望む桜島。山頂から噴煙がたなびいている
桜島・御岳錦江湾越しに望む
軒を深く出し、灰を洗い流しやすいよう設計された鹿児島の住宅
灰と暮らす住宅克灰住宅の考え方を取り入れた例
ずらりと並ぶ、規格外に大きい桜島大根
桜島大根ギネス認定・世界一重い大根
木になった、直径数センチほどの小さな桜島小みかん
桜島小みかんギネス認定・世界一小さいみかん
1914年の大正大噴火で市街地上空に立ち上る巨大な噴煙の記録写真
大正大噴火1914年、桜島を島から陸続きにした噴火
木の根元に、笠木の部分だけを地上に出して埋もれている石の鳥居
埋没鳥居黒神地区・大正大噴火の灰に埋もれた鳥居

次に読むなら

この島を陸続きにした、1914年の大噴火。

桜島は元々、その名の通り「島」でした。それが今のように大隅半島と地続きになったのは、 1914年(大正3年)の大正大噴火で流れ出た溶岩によるものです。この噴火で集落ごと火山灰に 埋もれてしまったのが、次に紹介する「埋没鳥居」が残る黒神地区です。桜島がたどってきた 噴火の歴史を、より大きな地質学的スケールで見ていきましょう。

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